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2002年4月 Archive
世田谷異聞 最終回
- 2002年4月22日 00:00
- トドメ氏の小説
じんわりとした暑さを感じて目を開けると、そこには少し染みの浮いた白い天井が見えた。いつもの木目のうるさい天井ではない。僕は一瞬混乱したが、すぐに事態を飲み込む。
そうだ。僕は病院にいるのだ。頭では病院の雰囲気に慣れたつもりでも、習慣とは恐ろしいもので身体はいつまでも世田谷の家に張り付いているのだ。僕は思わず苦笑する。
顔を上げて右手を見ると窓があり、そこから差し込む日差しが僕の額を焼き付ける。朝日とはいえ夏の太陽は目に痛い。今日も良い天気になりそうだった。自然と爽やかな気分になり、僕は軽く伸びをした。そしてふと思い付き、僕は反対側に顔を向ける。
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世田谷異聞 第三回
- 2002年4月21日 00:00
- トドメ氏の小説
快活なヌネの声が並平に起きるよう促す。
しかし並平は既に起きていた。実際は眠らなかったのである。しかもそれが既に二週間も続いている。身体が泥のように重かった。
また、朝が来た。
ぐずついた頭のまま、並平はため息を吐いた。
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世田谷異聞 第二回
- 2002年4月20日 00:00
- トドメ氏の小説
改札を出た所で始めて、並平は雪が降っている事に気付いた。試しに息を吐いてみると、面白いように白い煙となって空に舞い上がっていく。それを見上げる並平の表情にほろりと笑みが浮かんだ。
上向きだった視線を地上に戻すと、改札横の柱の影に見慣れた後ろ姿を見つけた。並平は小走りに近づくと彼の肩を叩いた。
「マヌオ君、今日は早いんだね。」
彼、マヌオがゆっくりと振り向くと、そこで並平の表情が一瞬固まった。何故なら
「やあ義父さん。見て下さいよ、雪です。」
そう言ってマヌオは満面の笑みを浮かべていた。それだけなら特に驚く事はないのだが、しかしその表情はどこかいびつで、まるでライオンを目の前におどける道化師のような、そんな笑顔だった。
並平は数歩、退いた。何か、違う。並平は直感したが、
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世田谷異聞 第一回
- 2002年4月19日 00:00
- トドメ氏の小説
何本目かの煙草に僕は火を点ける。肺の奥まで煙を吸い込むが、喉がちりちりと熱くなるだけで味は分からなかった。煙を吐き出すが、電灯を点けていないのでその形は分からない。ただ煙草の先だけが赤くぼんやりと光っている。じっとその先を見つめると、様々な事が浮かんでくる。それらはどれも僕を暗い気分にさせていく。
どうして、こうなったのだろうか。
手に力が篭もり、少しだけ煙草が曲がった。僕はもう一口煙を吸い込み、肺の中で循環させる。そしてもう一度、想う。
何故、こんな事になっているのか。
気が付いたのは最近の事だが、
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